Rashii

パーパスって、なんだろう?

全ての仕事で、コンセプトのその「上」まで立ち戻って考える。

―――御社はパーパスプランニングのプロセスとして「IPCSE」と言う流れを提唱しているとうかがいました。このプロセスについて教えていただけますか。

青山氏:まず、Iが「情報収集」、Pは「パーパスの発見と浸透」、Cは「コンセプトの開発」、Sが「戦略の策定」、Eが「戦略の実行」を意味しています。

I:情報探索/P:パーパスの発見と浸透/C:コンセプトの発見/S:戦略の作成/E:実行 I:情報探索/P:パーパスの発見と浸透/C:コンセプトの発見/S:戦略の作成/E:実行

企業であれば、必ず「モノを売る」「広告を作る」など何かしらのアウトプットがあると思いますが、そこには戦略が必要です。ただ、「戦略」というのは、ある意味、理屈としては正しい解のようなものが存在し、しかもそれが選択肢として提示されます。その中で方向性を絞り込んでいくには「コンセプト」が必要になるのですが、実はコンセプトも、考えようによってはいくらでも幅を持たせることができてしまう。そこで起こりがちなのが「企画が綺麗事で終わる」とか、「いい戦略とコンセプトなのに、進めるうちにブレる」といったようなことです。

「マーケティング戦略を考えてください」というお題に対して、その前のコンセプトまで立ち戻って考える、ということは他の企業さんでもやられることがあるかと思います。ただ、弊社では、それだけでは考えがいくらでも変わってしまうし、最終的に立ち戻るところも作れないと考えました。そこで、コンセプトのさらに上位概念である「なぜこのプロジェクトをするのか」「そもそも御社はなぜ存在しているのか」というところから我々は考え始めます、ということを「IPCSE」は表しています。

パーパスの部分だけにフォーカスすると、「パーパスの発見・再定義、あるいは、すでに存在しているものの整理」というフェーズと、「パーパスをもとに組織を動かす、ブランディングを進める」という2つのフェーズがあると考えています。前者を「デベロップメント」、後者を「ムーブメント」と我々は呼んでいるのですが、弊社ではその両方のお手伝いをしています。

―――「デベロップメント」に関連して、パーパスは「情熱」や「志」と近い概念であるというお話でしたが、それをいざ言語化すると、急に「どこでも言えるもの」になりがちだと思っています。そのような部分は、どのように乗り越えられているのでしょうか。

齊藤氏:2つあります。1つは、従業員に刺さっていないなら、思い切って「作り直す」という方法。もうひとつは、パーパスになるような言葉は抽象的な言葉が多かったりするので、それを「具現化するような施策を打ち出す」という方法です。これは例えば、「より豊かな生活を」という言葉があったとして、これ自体は誰でも言える言葉ですが、そこからさらに「我々が考える『より豊かな生活』は例えばこういうこと」だと、従業員が自分の業務に置き換えて理解できるようにしてあげるということです。

また、言語化する際には、最後はトップがどうするか、というところが重要だと思っています。ただ、決める過程において、多部署における従業員の方も一緒に巻き込んで、最後「みんなが納得してこれにする」という状況を作ることが必要です。

―――「ムーブメント」とありますが、こちらの考え方についても、もう少し教えていただけますか。

青山氏:会社が、パーパスに基づいて判断する、社員たちがそれに基づいた意思決定や行動ができるようになる、という状態を「ムーブメントが起きている状態」であると考えています。そのためにお手伝いしていることは2つあります。パーパスの浸透施策がひとつ。社内の業務・事例とパーパスとのつながりを顕在化させ、理解を促すということがもうひとつです。

「よりよい未来」のために、本物を未来に伝えていきたい。

―――御社自体のパーパスが非常に印象的なんですが、こちらについて少しご説明いただいてもよろしいでしょうか。

齊藤氏:私は、独立したら、自分たちの作っているものに自信を持っていて、それが世の中に広がっていくような企業のお手伝いをしていきたい、と思っていました。そんな企業を総括する言葉を探して「本物」にたどりついたんです。

「本物」を持つ企業の価値を世の中にわかっていただく、買っていただく、未来永劫続くような活動を手伝うことが我々のパーパスではないかという想いから、「本物を未来に伝えていく」というパーパスを制定しました。

Create great brands for the generation to come.本物を未来に伝えていく。

―――そうすると、御社の生み出す社会価値はまさにパーパスにあらわれていますよね。

齊藤氏:そうですね。言葉は陳腐ですけど、「よりよい未来」のために、企業ができることをお手伝いすること、それが弊社の価値だと思います。
その中で、別にパーパスという言葉は知らなくてもいいのですが、そういう考えが大事だということは社会にもっと啓蒙していく必要があると思いますし、全ての企業がパーパスを持って、それに基づいた活動ができるような社会を実現したいです。

―――最後に、日本において、「パーパス」とか「パーパス・ブランディング」は今後どのようになっていくと思われますか?

齊藤氏:定着してもらわないと困るんですけど笑。逆に、パーパスがないところは生き残れない、市場に参加させてもらえない、という状況が遅かれ早かれ来ると思います。
特に、今後海外進出を検討している企業ほど、それを痛感するのではないでしょうか。

パーパスとは、企業の「存在理由」であり、社会に対して何をもたらすかを表す「志」であり、ステークホルダーをひきつける「拠り所」でもある。今回の取材を通して、ひとことで「パーパス」といっても、見る角度によって様々な意味合いがあるのだとわかりました。
「個人で立つ」ことが重要な意味をもつこれからの社会では、企業だけでなく個人も「パーパス」を持って動くことが必要になるはずです。「難しそう」と感じる方もいるかもしれませんが、「なぜ自分は○○をするのか」について、一度じっくり向き合って考えてみるのもいいかもしれません。Rashiiは今後も「パーパスの探求」に真摯に向き合っていきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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