Rashii

あなたのパーパスは、何ですか?

そのパーパスは、唯一無二かどうか。

―――パーパスとして言語化する際に、「幸せをつくる」のような漠然とした言葉にしないなど、気をつけたいことはありますか。

古西氏:抽象度がある程度必要なケースもありますが、第三者がパーパスを聞いた時にイメージできるものの方がいいと思います。「誰に」「どこに」対して「何をする」。それで「どんな価値を生む」ということがわかる文章になっているとわかりやすいかと思います。

「幸せをつくる」だと、「じゃあ、それでこの企業にお願いしよう」とならないですよね。他にはない価値を生み出していることがわかりやすい方が、メッセージとしては尖ります。できれば唯一無二である表現ができるといいですね。パーパスを考える際に、「自分たちにしかできないことは何ですか?」「自分たちがやる意味は何ですか?」という問いで探求していくのが良いと思います。

―――そういう意味で、業界ごとに見ていくと食品業界は「健康に貢献する」というのが多いと思いますが、パーパスとしていかがですか?

古西氏:「健康に貢献する」という表現では、結局何も言っていないことになると思います。自社ならではの、強み・リソースなどを活かした「提供価値」や「貢献の仕方」を表現することでメッセージがはっきりと尖ったものになります。

伊吹氏:パーパスを定義することは、営利企業が売上や利益の拡大と同様に「社会的意義」を組織の上位概念として掲げるということだと思います。もともとあった存在意義を明文化し共有しあうということ。社会的大義のためであれば、社外のいろいろな人が協力してくれたり、共感してくれたりするので、パーパスを発信していくことでパーパスを持つ意義がどんどん広がっていきますよね。

「グローバルナンバーワン」や「売上1兆円」のようなものに対しては、消費者から見ると企業自身の目指す姿を示したものという捉え方になると思いますが、パーパスは社会的意義がより強く含まれるため、パーパス自体に共感することができ「この企業を選ぼう」とか「これを買おう」という購買行動にもつながっていく可能性があります。機能や品質、価格ではなく、ブランドの考えに共感することで「これを選ぶ」という意思が継続すると思います。

―――どんな企業にもデジタルトランスフォーメーションが求められますが、デジタル推進においてもパーパスは欠かせませんよね。

古西氏:今、流行りのテクノロジーやキーワードが来ると、各社それを追いかけて、その流れに乗っかろうとしてしまう。で、結局寡占状態になります。そうするとそこで競争が生まれ、生き残るためには差別化が必要になります。そういう時こそ、またパーパス(存在意義)が問われます。

伊吹氏:どうして社会価値を長期的な視野で再定義する必要があるかと言うと、時代やテクノロジー、ビジネスモデルが変化しても社会価値は緩やかに変化するか、もしくは普遍的なものなので変わらないから。そこを見据えておくと、デジタルトランスフォーメーションやイノベーションが起きる中でも、時代の変化に乗り遅れない。逆に新しいことを仕掛けていけることにつながるのではないかと考えています。

―――今回のお話でパーパスの深い理解につながりました。ありがとうございます。今日のように、パーパスでいろいろな人や企業とつながっていきたいです。最後にお二人のこれからの展望を聞かせてください。

古西氏:「世の中の人、一人ひとりが自分にとって何が大事かということに気づいて、それを大事にして生きる人を増やしたい」というのがまず一つ。そして、もう一つは、「本質的なビジネス・サービス・プロダクトを増やしたい」。ここでいう本質的とは、短期的価値よりも長期的価値、部分最適よりも全体最適、そして地球と人の両方が持続可能であるということです。

伊吹氏:私は高校生の時に地球の環境問題を考えたのがサステナビリティのテーマに取り組み始めたきっかけですが、「将来の子どもたちに持続可能な社会や未来を残したい」と思っています。コンサルティングという仕事では「ビジネスの力を通して社会を良くしていく」ことができると理想ですね。企業の経済価値と社会価値を両立しやすい環境になってきているので、実現しやすい時代だと思います。社会を良くしていくために、社会に対して大きなインパクトをもたらすような仕事をしている自分が理想的な自分ではないかと思います。

「あなたのパーパスは何ですか?」今回の記事のタイトルのように、個人が自身の存在意義を問いパーパスを明確にする大切さ、そして一人ひとりがパーパスを言語化・意識化する社会になっていくという新たな気づきがあったのではないでしょうか。まずは自分が「何を大切にしたいのか?」「働くことを通して何をしていきたいのか?」見つめることからはじめてみる。そうすると、いま働く会社のパーパスとの重なりが見え、仕事にやりがいを感じ、個人と組織に良いサイクルが生まれる。パーパスとは決して会社だけのものではなく、そこで働く一人ひとりの価値観や生き方と深く関係してくるもの。そこが理解できれば、パーパスをいまよりもっと身近に感じることができるはずです。唯一無二のパーパス、共感が生まれるパーパス、個人をエンパワーメントするパーパス。Rashiiのパーパス探究は、これからも続きます。
吉岡 崇

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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