Rashii

使った後のことも考える。
デザインのその先。

株式会社クスクス 代表取締役 鈴木 竜氏

―――コストとの兼ね合いもあるとは思いますが、持続可能な社会をどうつくるかという視点で設計やデザインも取り組んでいかなければならない時代ですよね。

鈴木代表:そうですね。そうした考えはこれからどんどん加速していくと思うので、ゴミを出さない社会をどうやってつくるのか。特に建築現場とか内装の現場とかって、すごい量のゴミが出るんです。トラック何台分出るんだというぐらい出ているのを、若い頃から見させられました。日本も分別してゴミを出していると言っても、再利用されているのは2割ぐらいしかないですから。

日本はまだ設備が整ってるからいいですけど、東南アジアは全然できてない。ですので、将来的には竹のプロダクトを海外に持っていきたいなと。竹はどこでも育ちやすいですし、竹をベースにいろいろと考えていこうと思っています。型枠を3Dプリンターでつくって竹パウダーをミックスして形ができるんですが、型枠をみんなに配っていくとか。配合をオープンソースにすればある程度みんなが各自でつくれるようになる、それはそれでいいと思っています。例えばプランターとか箸置きとか、ストローなどいろんなプロダクトに使える可能性があるはずです。

―――デザインの先に何があるのかを常に考えられているとのことですが

鈴木代表:『kusukusu』では、どうしても使った後のことも考えてしまいます。当然できた時は美しく、やさしい空間でありたいなと思うんですけど、必ず廃棄する時が来るので、その時に「どうありたいか」っていうのは常に考えています。それが「デザインのその先」にという意味なんですけど。基本的にはデザインして終わりというより、どちらかと言うとその後のことの方が考えちゃうんですね。

今は生分解性プラスチックの方に世の中が向かっている流れがありますが、それは間違いだと思っていて。生分解性プラスチックのストロー、コップをつくったと言っても結局一定の条件が無いと分解しないんです。あれは結局石油製品である以上は液体であろうが、気体であろうが必ず圧縮されて残るのは残るんです。それよりは、また戻ってくる社会のシステムをつくった方がいいかなって思います。生分解性プラスチックは結構波が来てますけど、結局はやっていることは大きくは変わらないと思うのです。

『完全循環型デザイン』の
実現を目指して。

『完全循環型デザイン』を起点に、鎌倉における都市型SDGsの提案などの発信をしている。 『完全循環型デザイン』を起点に、
鎌倉における都市型SDGsの提案などの
発信をしている。

―――今後、鎌倉という場所でどのようなことをしていきたいですか。

鈴木代表:鎌倉市といろんな取組みを一緒にやりたいですね。例えば、循環する資源やプラスチックにかわる竹を使ったプロダクトの開発、空き家の問題について、私たちが運営するサイト『完全循環型デザイン ~鎌倉から考えるSDGs~』で発信していますが、実現に向けて鎌倉市とやっていきたいです。そして、この鎌倉の循環モデルをそのまま地方に持っていって展開できると思うんです。そして、それをゆくゆくは東南アジアに持って行きたいですね。あとは農業。空き家を活用しながら、鎌倉でしか採れない野菜をつくって自給自足できるようにしたいですね。大きな循環というよりは、鎌倉だけで循環できるように。そういう想いも持っています。

そして、誰もやらなければ自分でやろうと思っているのは、完全循環型の店舗、完全循環のモデルをつくること。自然に循環する、ゴミが出ない、ムダなエネルギーを使わない、それは僕らが目指す理想の社会だと思います。頭で考えているよりは、社会をちょっとでも変えていかないといけないのかなと。私たちが思っている以上に現実はかなり深刻だと思います。それをデザインの力で、小さなことから変えていけたらいいなと思っています。

「デザインのその先」の考えのもとに、つくって終わりではなく、いつか廃棄される時に「どうありたいか」「どうすればいい社会になるか」まで考える。それは、持続可能な社会をみんなでつくっていく時代のデザインには欠かせない視点だと思います。消費活動のためだけのデザインではなく、循環し持続していくためのデザイン、仕組みのデザイン。この考え方が、私たち自身の行動を考えてみる一つのきっかけになれば幸いです。
吉岡 崇

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