Rashii

理想を実現するための
『完全循環型デザイン』。

株式会社クスクス 代表取締役 鈴木 竜氏 株式会社クスクス 代表取締役 鈴木 竜氏

―――まずは、社名の『kusukusu』に込めた想いとデザインについての考えをお聞かせいただけますか。

鈴木代表:『kusukusu』という社名については単純で、「関わるみんなが笑顔になるような企業にしたい」というのが発端です。「関わりあう人たちが笑いあえるような社会をつくれたらいいな」、「自分だけが利益を享受するだけではなく、みんなで共有できたらいいな」という想いでつけました。

『kusukusu』がデザイン会社としてどう差別化していくかという時に、「ブランディング」というのは一つ大きな強みだと思っています。どんなプロジェクトでもブランディングは上流にあるもので、特に経営者とみっちりやるものですよね。その会社の理念を段階的に表現し、理念に基づいたロゴデザイン、店舗内装やユニフォーム、お皿など、一つひとつのデザインを統一していくことができます。一貫性を持った店舗であることが重要です。

kusukusu Inc.

鈴木代表:我々としては何が一番悲しいかと言うと、お手伝いさせていただいたお店が半年ぐらいでなくなったりすること。ですので、緻密に計算をして「売れるお店をつくっていく」というのが一つのビジョンであります。何となくお店をはじめたいと考えている方でも、お店をつくる前段階の「僕らはこういうお店づくりをしている」という軸を一緒にしっかりつくれば一から全部説明ができます。そうすると働くスタッフ全員が「何で私はここで働いているんだろう」とか「将来どうなっていくんだろう」というのを見据えながらやっていけますよね。

―――ビジョン開発から一緒に考えるんですね。依頼は飲食店が中心ですか。

鈴木代表:飲食店が多いです。企業案件もあれば、個人の方もいらっしゃいます。都内の方が割合は多いのですが、最近は鎌倉での依頼が徐々に増えてきています。私たちが提案するからには『完全循環型デザイン』という私たちらしさを常に盛り込みたいと思っています。

『完全循環型デザイン』とは何か?ということですが。例えば『スターバックス』がプラスチック製のストローをやめると打ち出したり、『H&M』がビニール製の袋はやめましょうという話になっていますよね。それを紙製のストローに変えることで結局何が変わると思いますか?生分解性プラスチックというものを使うことによって何が変わるか?実際は生分解性プラスチックを使っても受け皿がないからみんな燃えるゴミで捨てるだけで結局燃やしちゃうんです。それって私たちの中ではあまり意味がないと思っています。紙製のストローにしても、結局燃やしちゃうから燃えるゴミの量としてはあまり変わらないと思うので。

私たちは竹を原料にした容器を試験的につくっています。竹のパウダーに米粉をちょっと入れて固めていくんですが、その容器を『循環ボックス』という箱をつくってそこに全部入れられるようにしたらいいんじゃないかと考えています。

竹を原料にした容器の試作品 竹を原料にした容器の試作品。
今も試行錯誤を続けている。

鈴木代表:この容器は、竹だけでできているので使い終わった時に分別する必要がないんです。これを循環ボックスに入れて、後は細く砕いて山に戻すだけ。竹パウダーって実は乳酸菌がすごくいっぱい含まれていて、畑に蒔いた時にコンポスト効果があると言うか畑が元気になるんです。こういったことをできるのが、私たちの理想です。分別する必要がない、ゴミが出ない社会というのが『完全循環型社会』なんです。それが一つのテーマです。

―――その『完全循環型デザイン』の想いに至ったのは、何がきっかけなんですか?

鈴木代表:原体験と言ったらすごい大げさなんですけど、2017年に祐天寺につくった『フルリ』と言うカフェがあるんです。このカフェは前のテナントの木を再利用してつくったんです。既存店の木を使って壁なども構成して。ほとんど新しいものは使ってなくて、家具も全部廃材でつくっています。照明も再生ガラスを使っているんです。

けれども、「エコ」とか「循環です」とかって一言もうたっていないんです。「ただ当たり前のようにやっていきたい」というのが私たちのスタイルで、オーナーさんとも共有していただいたことなんですね。壁の装飾も鎌倉の陶芸家さんから陶器で失敗したものをもらってきて、それを壁に貼り付けていきました。「なるべく新しいものを使うのはやめようね」というところからはじまっているんです。

『完全循環型デザイン』を考える原体験となった『フルリ』。右端がコンポストボックス。 『完全循環型デザイン』を考える原体験となった
『フルリ』。
右端がコンポストボックス。

フルリの店頭で、ハーブを育てていて。これはカフェで出た生ゴミをコンポストでたい肥にして、周りの植物やハーブにあげるんです。そこで育ったハーブをコーヒーや料理などに入れる。カフェでまた出たゴミはコンポストに入れていくという流れをつくりました。

私たちとしてはできる限りのことをやったつもりだったんですが、お店で提供するものがプラスチックのカップだったりする。ですので「完全循環型の店舗って、できないのかな」と悩んだ時期もありました。そうなるともう「自分自身が何かしらつくっていくしかない」、先ほどの「竹の容器をつくれば完全循環型になるんじゃないか」と考えました。

―――需要があってというよりは、鈴木さんの想いでつくられた容器なんですね。

鈴木代表:そうですね。店舗型で今これ以上やろうと思ってもなかなか難しい。コンポストをつけて再生材を使って、廃材や再生ガラスを使ってとこれ以上は正直なかなか難しくて、やろうと思うとすごく費用がかかるんですね。私たちとしては、設備系だったら水を循環させたり雨水をろ過させてトイレの水で流すとか、そういうのはできると思うんです。でもオペレーションが出てくるプラスチックのコップとかっていうのは、正直コントロールできないんです。

オーナーさんに話しても、再生紙を使ったカップとプラスチックのカップの費用が全然違うから、再生紙にするとどうしてもコーヒー500円を550円に上げざるを得ない。でもそうしたらお客さんが離れてしまう。「だったら、500円でプラスチックの方がいい」という発想になってしまうんです。それだと結局なかなか前に進まない。もうちょっと考え方を変えていかないと難しいですよね。それが完全循環型の原点だったんです。

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