Rashii

それは、旅のように。

古きよきものを愛しみ、
敬意を払いつつ、
今の時代に必要なものに変えて
活かす仕組みを考える

鎌倉駅からまっすぐ鎌倉市役所の通りを歩いて、トンネルを抜けると観光客のにぎやかさも少し落ち着いて、閑静な住宅街が広がっています。少し行くと左側に見えてくる美しい和風建築が、「朝食喜心」。心豊かな一日を始めるための、鎌倉の朝食メニューが食べられるお店です。ここはViajesが総合プロデュースを手掛けている拠点のひとつ。同社は鎌倉を中心に、「そこでしか味わえない貴重な体験」を世界に届けている会社・チーム。「古民家」を拠点とした、様々な教室やアクティビティの提供を軸に、地域プロデュース事業・制作ブランディング事業・体験企画事業の3つの事業を展開、新しいプロジェクトを次々と手掛けています。「古民家」を活性化し次代に残している、同社の生み出す社会価値・パーパスの本質は「伝統・文化を守る」ということなのか?喜心のお店で、Viajes創業者の池田めぐみ氏、池田さゆり氏のお二人にお話をお伺いいたしました。お二人は双子の姉妹です。
(取材・文:橋本和人)

Viajes=旅(スペイン語)
旅には一生残るような気付き、大切なものがある

鎌倉 蕾の家 Viajesのチーム ※鎌倉 蕾の家 Viajesのチーム

―日本の良さを広く世の中に発信したいという強い思いから会社を立ち上げたとありますが、そのいきさつを教えてください。

池田めぐみ氏:元々創業メンバーは奥谷とさゆりと私の3人。きっかけは、大学時代に色々と旅をしたのですが、最後の卒業旅行でスペインのバルセロナに行った時のことです。バレンシアという地域で地元の方々に、いろんな現地体験をさせてもらって、その時にパエリアをみんなで囲んだんですけれども、それがそれまで私たちの持っていたイメージ“パエリアはレストランでお行儀よく食べるもの”とは全く違っていて。現地で獲れた雉を使って、枯れてしまったオレンジの木を燃やして、大きなフライパンから直に、日本の鍋を囲むような感じで、食べたんです。現地でしか味わえない、なかなか体験できないような、文化体験・生活体験をした時に、地域性とか個性とか、とても面白いと思いまして。やはりこういった生活文化は地域や個が立っていて、様々あって、そこで交流することによって、新たな気づき、一生残るような気づきが得られる。旅にはそういった大切なものがあると思いました。そして日本に帰ってきて、私たちももっと日本の文化を世界に発信していきたい、文化交流ができるような拠点を作りたい、と考えるようになりました。そんな矢先に、私たちは鎌倉生まれ鎌倉育ちなのですが、私たちが大好きだった古民家などがどんどん潰されて、新しい分譲住宅になっていって。それを見ていると大切な風景が壊れていくような感じがしました。そういった日本の古民家のような古き良き日本の文化を活かして、人が集まるような場所をつくろうと、世界に発信しようと、そんな想いで事業をスタートしました。

Viajesの企画・運営・プロデュースしているプロジェクト「古民家」から様々な学び・アクティビティ・コンテンツを発信している。 ※Viajesの企画・運営・プロデュースしている
プロジェクト「古民家」から
様々な学び・
アクティビティ・コンテンツを発信している。

自分たちも一緒に
学んでいけるような
そんな仕組みが必要でした

―古民家などが失われていくことについてどんな想いやお考えがありますか?

池田さゆり氏:仕組みの問題があると思います。相続税など空き家が生まれてしまう仕組みになってしまっているのでは。大きな変化は時間も必要ですし、なかなか大変だと思うんですけれども、私たちの身近な地元から、少しづつでも残していける工夫ができるのではないか、文化を守っていくために、教えてもらったり、自分たちも一緒に学んでいけるような、そんな仕組みが必要ということで、教室として、蕾の家からスタートしました。

鎌倉 蕾の家では、様々な教室が開かれています。和菓子教室、料理教室、ハーブ講座、ヨガ、書道、茶道、金継ぎ、着付け、マインドフルネス…また、会議室としての活用も可能です。教える人、学ぶ人が自由にここで交流できる仕組みになっています。

鎌倉 蕾の家の間取り図と庭の様子 ※鎌倉 蕾の家の間取り図と庭の様子
鎌倉 蕾の家では日本文化が学べる様々な教室が催されている(写真はお手軽金継ぎ教室・伝筆教室・和菓子教室) ※鎌倉 蕾の家では日本文化が学べる
様々な教室が催されている
(写真はお手軽金継ぎ教室・伝筆教室・和菓子教室)

―展開されている3つの事業について教えてください。

池田さゆり氏:自分たちが今までやってきたことを順番に事業にしてきているというような感覚があります。まずその土地ならではの体験の提供から始まって、そして体験を通して、様々な人と協力していくことで、土地そのものの価値を上げていく。イベントを企画したり、飲食店を企画したり、後は今そういった宿を企画したり。地域プロデュースです。それがブランディングや制作などの他の事業に発展していってます。川下から川上まで繋がって行ってると思います。そんな感じがします。でも、その土地らしいものを、その土地に来た人が味わいたいもの、体験したいことを、つくっていくということでは軸があります。軸は変わっていないと思います。ローカライズと言うか、土地の魅力、そういう考え方を大切にしたい。それは私たちがそういった、とても人生豊かにしてくれたという原体験があるので、そこの軸はぶらしたくないんです。

―少し前から、空き家問題を解決する方法として、インバウンドをターゲットに、古民家の持つ日本文化の趣を活用した宿泊施設の運営などの古民家再生ビジネスが注目されてきています。そんな中でViajesは古民家を、“様々な貴重な体験のできるプラットフォーム”と、とらえているところがユニークなところだと思います。プラットフォームを活性化させることで、結果、周辺の地域をも活性化せています。インタビューの場所でもある「朝食 喜心」に込められた想いから、同社のパーパスを探っていきます。

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