Rashii

石坂産業 地域との共存を実現した産廃

見知らぬ土地に植樹するより
地元の森を守ることが
先だった。

三富今昔村 集の広場 三富今昔村 集の広場

東武東上線ふじみ野駅から無料送迎バスにのって石坂産業に向かいます。かつて“産廃銀座”と言われていたこともあるように、道路沿いに幾つかの産業廃棄物処理施設があります。しばらく行くと、忽然と石坂産業が現れます。整然として見やすい案内表示、そして、「自然と美しく生きる。」という白地に堂々と書かれた大きな看板。ここまで見てきた施設とはガラリと印象が変わりキレイで目立ちます。そしてバスが駐車する場所は、木のぬくもりが感じられる和風の建物 「くぬぎの森交流プラザ」の駐車場。社員の方のあたたかい笑顔と元気な挨拶で迎えられます。ここが再生した森「三富今昔村」への入り口。江戸時代に開拓され、人と自然が共生して暮らしてきた里山「三富地域」に石坂産業はあり、豊かな自然が広がっています。しかしここは近年まで、不法投棄の多い荒廃した森でした。

「この森自体が不法投棄の穴場の場所だったんです。やっぱり森の管理もお金がかかるので地権者さんもなかなか手がつけられずにいて。20年前、地域から産廃は出て行けと言われたときに、我々が地域から愛されるために、どうしようって考えていた。色々悩んだ結果、見知らぬ土地に植樹をして環境問題解決するよりも、まず、地元で困っていることを解決することが先ではないかと。不法投棄で荒廃した森をボランティアで清掃することから始めて、周辺地域の方が所有する雑木林をお借りして、我々が管理し、生物多様性に対応できるよう整備しました。すると徐々に増えていって結果、東京ドーム約4個分の大きさになった。一部国有林も三芳町経由で整備させてもらっています。」(石坂専務)

三富今昔村 里山環境フィールド イラストマップ

森と産廃、農業と産廃は
共存できる。

「関東ローム層で土が肥えていないので、落葉樹を植えて、他の木は間伐して光を森の中に入れてあげて、下草が生えると昆虫が来て、昆虫が来ると鳥が来る、鳥は外からの菌を運んでくる。そこで落ち葉が発酵促進されて…と循環につながってくる。森を使わないで放っておくとどうなるかというと、日が当たらない森になる。そうすると下草が生えない。木だけが鬱蒼と伸びて、最後はジャングルのようになってしまう。」(熊谷執行役員)

石坂産業は荒廃した森の再生に乗り出しました。生物多様性の森を目指し保全エリアをつくり、農業のエリア、景観美のエリアと次々整備し、自然と触れ合いながら人と人が交流できる場にしようと試行錯誤を繰り返しました。今では1300種類以上の動植物が生息する生物多様性の森へと再生させ、生物多様性の取り組みを評価するJHEP認証で国内最高のAAA認定を取得。また、食品安全・労働環境・環境保全に配慮した“持続的な生産活動”を実践する優良企業に与えられる、GLOBAL GAP・ASIA GAPを取得したオーガニック固有種野菜を栽培する「石坂ファーム」も展開。「森と産廃は共存できない」「農業と産廃は共存できない」「だから出て行け」…という声を、具体的な里山保全という実践で“共存できる”ということを地域に示したのです。

オーガニック野菜・有機野菜・こだわり野菜の石坂ファーム1 オーガニック野菜・有機野菜・こだわり野菜の石坂ファーム2 オーガニック野菜・有機野菜・こだわり野菜の石坂ファーム

地域の方々が
この森で遊びたい、と。

石坂産業株式会社 石坂専務

「森は我々が手を入れ管理しながら、一般公開はしていなかった。しかし地域の方々がこの森で遊びたいと、そういった要望もありまして。今は三富今昔村の入り口である交流プラザを作り、世代年齢関係なく、一般の方に開放しています。もともとは非営利で進めていたのですが、「くぬぎの森」に入られる場合は、森の再生保全費として大人の方のみ500円をお願いしています。でも、赤なんです(笑)」(石坂専務)

石坂産業では、豊かに再生させた森とプラントを結びつけて“地域の資産”として認知を高めていくような活動を今後も推進していくそうです。荒廃した森を再生させたストーリーや、自然とリサイクルプラントの“環境”をテーマに一貫した体験は、確かに美しい。しかし、こういったいわゆる“社会貢献活動”は、これだけでは、どこの企業でも行っているようにも感じます。石坂専務は、今後、これらの取り組みを発展させ、採算の取れる持続可能なものにしていくといいます。どのようにCSVを成立させていくのか、その背景には石坂産業のパーパスと、社会の意識を変えていく「環境教育」がありました。

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