技術の変化に対して我々は売っていくものを変えていきました。

― ―グローバルニッチ戦略について教えてください。

足立社長:例えば自動車は、はじめはテールパイプから出てくる排ガスを計測するしかありませんでした。今では排ガス低減技術が向上し、触媒と電子制御が組み合わさって、すべてソフトウエアでコントロールされています。テールパイプから出るガス計測から、エンジンの近くや触媒の前後でどのように排ガスが変化しているかを測るようになりました。最後はきれいなガスとなるように、プロセス全体で制御するのです。このように我々は、技術の変化に対して売っていくものを変えてきました。自動車というのは小さな石油プラントのようなものです。これをトータルでコントロールするために我々は何ができるか。排ガスを測るだけでなく、その車を作るシステム自体を自動化、オートメーションする技術まで使います。70年代初めに米国でサンプリング技術を持つ会社を買収しましたが、同じころオートメーション技術を持つ会社も買収しています。そんな時代に日本の小さい企業が、米国の企業を買収しているって面白いと思いませんか?

どこまでも
お客さんについていく。

※HORIBA MIRA全景(東京ドーム60個分の敷地に、全長4.5kmのテストコースや衝突試験設備等を保有)

― ―どうしてそのように次々とチャレンジできるのでしょうか?

足立社長:その時から米国に出ていて、自動車作りにおいて、電子制御がトレンドになりつつあるということ、省力化や効率をもっと上げなければいけないことはわかっていました。お客さんと一緒にやっていかなければいけない、どこまでもお客さんについていく、となると、そのシステム全体が必要になってきます。分析計から始まったビジネスですが、今となっては計測建屋の施工も丸々請け負える。「どんな車を作りたいんですか?じゃあこういう実験施設を作りましょう。計測建屋の建築のマネジメントもします。あとは電源入れたら全部動くようにします。」というところまでカバーしています。メカトロニクス、オートメーションもできるようになりました。最近では、テストコースや試験エンジニアリングをやっている「MIRA社」、2018年には「FuelCon社」を買収して電動化技術もカバーしました。お付き合いさせていただいている業界の技術の進歩に合わせて、我々ができることを、できるだけ広げていったということです。

自動車開発のシステム化への対応は堀場製作所の米国拠点がリーダーです。このように世界にある我々の最前線から新しい流れが入ってきて対応していくと、世界中で同じ対応をしてほしいということになる。それは自動車だけでなく、例えば半導体でも一緒です。半導体製造プロセスにおいては、気体の流量計測から始まり、非常に重要な液体の濃度計測の分野に広がった。その技術であれば「うちできるよ」「じゃあいきましょう」という形でちょっとずつ広がっていく。業界にしっかり入っていって、その業界の言葉をしゃべれるようになると、お客さんから「堀場製作所に任せておけばいい」という存在になれるのです。

業界の最前線にしっかり入り込んで、そこからリードしていく。世界に展開していく。技術の変化に合わせて売っていくものを変えていく、トータルにサービスを拡大し、そうすることで全部任せてもらえる存在になる。「どこまでもお客さんについていく」そんな強い想いがグローバルニッチ戦略をかなえていました。堀場製作所が一番大切にしている「技術人財」、その活性と求心力となっている社是「おもしろおかしく」について、いよいよ核心に迫っていきます。

cainz

足立正之

博士(工学)
株式会社堀場製作所 代表取締役社長
ホリバ・フランス社(仏)
経営監査委員会議長 ※所属・役職インタビュー当時

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