Rashii

SDGsの可能性

つなげることで、新しい自分の価値を生む。

―――SDGパートナーズの強みは、ずばり何でしょうか?

田瀬氏:SDGsということの本質について、日本で誰よりもわかっています。169のターゲットがあって、単にそれをうんぬんするものではないということを社員全員がわかっている。2つ目は今までつなげて考えられなかったことを、つなげて考える能力があります。不平等と健康とかいろんなものが因果関係でつながっているわけですよね。そこを飯のネタとして考えた人はいないと思うんです。人がつなげて考えないものをつなげて考える力があります。つながった瞬間に0から1が生まれるんです。

チームワークの強みはみんなが一つのミッションを持って、役割分担ができて相互補完しあってと言いますよね。それはそれで正しいんですけれども、全然次元の違うチームワークの強みというのがあります。例えば、左目だけで物を見たら立体感がないですよね。左目と右目で見ることで、1+1が2じゃなくて立体感という新しい価値が生まれます。どんなに単一な目があっても、役割分担してもダメなんですよ。

人文字もそうなんですけれども、100人の人間が集まって文字という新しい情報を形成しますよね。これは一人一人が役割分担をして作業をしてもダメで、みんなでひとつの違う次元の価値をつくり出すというのがチームワークなんです。何かと何かをつなげることによって、今まで足していただけでは生まれなかった価値を生むということが人間はできるんです。組み合わせる、つなげることで新しい自分の価値を生むことができます。

―――専門的であり、広く見る力もあり、その両方なんでしょうか?

田瀬氏:両方だと思います。私は外務省や国連にいて、民間もやっているのでいろんな所で何かどう困っているのかというのがわかります。そういう意味ではいろんな視点を持っていると思います。それぞれの視点を組み合わせて考えます。あるいは相対化して考えます。どうつなげれば一番良い結果になるのかというのを想像しています。

例えば、90年代の日本がODAで一番力を入れていたのは青年海外協力隊です。村に入り込んで村の人たちと同じ目線で一緒に作業することでコツコツと地道に現場から物を変えていく。一つの村は点かもしれないけれど、10の村が集まれば線になるし、100の村が集まれば面になります。それで国は変わっていくのだというのが日本の90年代のODA主張です。一方で「予算を変えないと、政策を変えないと、変わるわけない」というのが欧米の考え方です。どっちが正しかったかと言うと、両方ダメだったんです。

どうしてかと言うと、どんなに点をつないだって、政策を変えないと同じ現象がどんどん起きるわけです。だからダメだった。政策を変えても、ラストワンマイルができなければ現実が変わらないからダメ。欧米はずっと「構造調整」とトップダウンの事ばっかり言っているし、日本はそうじゃなく「現場、現場」と言っている。つなげて考えればいいのに、多くの人はそこができないんです。ボトムアップとトップダウンと両方一緒にできることが私の強みです。

―――そういう能力は今後どんどん求められますよね。その能力はどのようにして身につけていくのでしょうか?

田瀬氏:私は国連で一緒に緒方貞子さんと働いていたんですが、緒方さんは難民高等弁務官として上から物事を見ていたわけです。「UNHCR、ユニセフそれぞれの事情があるけれども、実際現場に行ってみたら人間というのはそんなに割り切れないのよ」と。「ユニセフだったら教育、WHOだったら保健、ユネスコも教育、ILOは労働」というようにわけて考えるわけですけれども、一人の人生を「ここはILOで、ここはユニセフだとか、わけられない」と言うんです。

その人の存在は一つ。一つの存在として見なければいけない。その中にいろんなものが入り込んでいるわけですよね。それを「こちらのサプライ側の都合で、ユニセフだ、ILOだ、UNHCRだというやり方は間違いで一人の人から考えなさい」と。この人にとって一番いい方法は何かと考えるにはみんなが一緒になって考えなければダメだというので、「人間の安全保障」という考え方が生まれたんです。

緒方さんが「田瀬さんね、私は思うんだけど、プロテクションとエンパワーメントが組み合わさらないとだめなのよ」と彼女の中で演繹と帰納が結びついた瞬間に私はいたんですよね。同じように私も考えていたので、青年海外協力隊だけではダメだし、構造調整だけでは動かないし、現場だけでもそうだよなと。そういう意味で言うと、日本の企業はボトムアップが好きですよね。トップダウンでは考えない。

―――答えが見つかったような瞬間があると思いますが、考えを辞めてしまって答えは別のところにあったということがあったりします。どこまで考えればいいのか悩むことがあります。

田瀬氏:わからない時、自分が「この人がわかっているよね」という人に聞きに行くというのが第一。5時間本を読んでわからないことも、30分聞けばわかることもあるじゃないですか?まず教えてもらう。教えてもらった中で、いろいろ聞いてみるんです。何人かに話を聞いたことで、今度は「自分だったらこう考えるんだけど」とソリューションを考えます。「もしかしてこれでつながるんじゃないか」と思ったら、それを洗練させる前に質問した人たち、信頼する人に「コレってもしかして、こういうことですか?」「これはこういう風にしたらもっと可能性があるんじゃないですか?」と言ってみるんです。

間違っている場合、その人たちはその場で教えてくれます。正しい道筋の可能性がある場合には、「確かにそうだよね。そうなんだけど、こういう風にもできるよね」となる。10人ぐらい繰り返すと、自分のアイデアが正しいのか正しくないのか明確に見えてきます。どうすればいいのか?ということまで見える可能性もあります。いいアイデア、新しいアイデアだと思ったらいろんな人ぶつけてみると正しいかどうか教えてくれますね。

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